令和元年12月に発行されました「富山大学医学部 小児科学教室 開局40周年記念誌」に寄稿させていただきましたものを掲載いたします。
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ご縁に感謝
それは、三十数年前、小児科の小西徹先生からの、突然のお電話から始まりました。患者さんに継続してお会いできる場を求めて“研修生希望願い”を出したところ、児童学科大学院修了の経歴なら小児科向きではないかと、研究補助員に採用してくださったのです。
当初は小児神経外来を受診する子どもたちの、発達・知能検査に携わりました。勤務を重ねる中で、医学的検査で「異常なし」と診断が下りているにもかかわらず、腹痛や足の疼痛を訴え続け、治療を求めて、親子でやってくる子ども達とも出会うようになりました。
臨床心理士が、子どもと遊びながら行動を観察し、母親と親身に話し合っていくと、次第に家族の深い哀しみが浮かび上がってきます。そこでのストレスを、小さな子どもが一身に浴びて、様々な症状に転化しているのです。いわゆる心身症児には、親面接とともに、箱庭療法・遊戯療法等々が有効であることもわかってきました。
弟妹の出生とともに、赤ちゃん返りで周りを悩ませた幼児もいました。こども達は生まれて以来の周囲との関係性のなかで育っていくという、現実の姿を教えてくれました。これらをきっかけに、“赤ちゃんと家族のこころの健康を応援するための、職種を超えた学びの場である日本乳幼児精神保健学会”に所属するようになり、現在も微力ながら活動を続けています。
すべての始まりは、門外漢の私を小児科学教室の片隅に招き入れてくださった、懐の深い先生方のお陰です。人生の道しるべを与えてくださった富山大学小児科学教室への感謝の思いは生涯尽きることはありません。
この春、小さなカウンセリングルーム「こころの相談室とやま」を、神通川のほとりに開室いたしました。長年 複数の職場を転々としながら心理臨床の世界で生きてきた私の、集大成の場になればと思っています。