「こころの相談室とやま」は、2019年春に開室した、臨床心理士によるカウンセリングルームです。それぞれの家族・個人の悩みに寄り添い、子どもの発育・発達や両親との関係性のもつれから起こる「生きにくさ」の相談にのります。対象者の年齢を問うことはなく、守秘義務は厳重に守ることをお約束いたします。
ごあいさつ
かって、恩師の古澤頼雄先生は、関わる側のスタッフの内省と子どもの心の変化とは切り離せない。“大人の心の展開なくして、子どもたちの心の成長はない”と、おっしゃり、毎夏行われる子どもキャンプの中で、40年にわたって、子どもたちの成長ぶりを、共有してこられました。
すでに中年期にいる、かつての子どもたちは、壮大な縦断的研究(関わり合い)のメンバーだったことが、それぞれの人生にどんな意味を持っていたかを語ってくれています。
私にとっても若き日々、夜を徹してのスタッフミーティングで、子どもの見方・触れ方について議論したこと、日中は子ども達と共に走り回って子供時代を再体験できたこと等々が、長い年月を経た今も、心理臨床の原点として、ゆるぎない形で、私の根底に息づいています。
親もしくは子どもが生きにくさを感じているとき、どちらかだけに原因があるわけではありません。親は一生懸命に子どものために頑張っているのに、子どもの方はかまってもらえない淋しさを抱え続けていたりします。また、子どもの個性が際立っているため、 周囲からの理解の及びにくい時もあります。ボタンのかけ違いの積み重なりが、今日発達障碍と決めつけられている子どもたちの背景にも見え隠れしています。さらに、親自身も、よく似た悲しみを抱えながら、子供時代を生き延びてきている人もいます。哀しみの連鎖(世代間伝達)です。
連綿と続く人々の歴史性に思いを馳せるとき、生きとし生きるものへの、いとおしさ が募ってまいります。ご苦労多い中を“けなげにも頑張っていらっしゃるなぁ”と、共感の念が湧いてくるとき、来談者の方も、変化への道程を歩き始めていかれるように思います。
伊東真理子プロフィール
富山中部高校卒業後、富山大学教育学部で小学校・中学校・高等学校・養護教諭の免許を取得。 日本女子大学大学院に進学後、古澤頼雄先生が主宰されていたHRL(旧 児童発達研究会)に参加。子どもとスタッフとの人間関係を実践的に学ぶ。 富山医科薬科大学小児科では、小児神経外来を受診する子どもたちの発達、知能検査等に携わるが、勤務を重ねる中で、医学的検査で「異常なし」と診断が下りているにもかかわらず、心身の不調を訴えて、受診する親子にも出会うようになる。家族の抱える深い哀しみが症状の背景に見え隠れしている場合もあることを知る。また、弟妹の出生と共に、赤ちゃん返りで周りを悩ませた幼児もいる。こども達は生まれて以来の周囲との関係性の中で育っていくという、現実の姿を教えてくれた。これらをきっかけに、”赤ちゃんと家族の心の健康を応援するために、職種を超えた学びの場である、日本乳幼児精神保健学会”に所属するようになり、現在も微力ながら活動を続けている。 富山市教育センターでは、教育と心理臨床の接点での役割を担った。 現在も、次世代のために、スクールカウンセラーなど、先生方と協働している。